金色夜叉 の変更点


 [[こ]]【こんじきやしゃ:金色夜叉】[[小説]]
 #counter(today)
 
 *架空の観光地 [#q0d5b7fa]
 -最近は観光地としてあまり騒がれなくなってしまった[[熱海]]ですが、以前は[[東京>東京都]]から泊まりがけで出かける気軽な観光地として有名でした。~
 その中で観光スポットとしてお馴染みだったのが、尾崎紅葉の書いた《金色夜叉:こんじきやしゃ》の舞台となった、お宮の松です。~
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 -この[[松]]の前で恋仲だったお宮が金に目がくらんでしまった事に怒った寛一が「来年の今月今夜、1月7日のこの[[月]]を、ボクの[[涙]]で曇らせてみせよう」といい、お宮を足蹴にしたのです。~
 が、もちろんこの話は小説だけの話で実際にはこの松の前でそんな事は起こらなかったのです。それゆえに、作者の尾崎紅葉も別にどの松の前でとは考えていなかったのです。~
 しかし、小説がヒットしてしまった後で熱海に来た観光客が「で、あの有名な松はどれなんです?」と聞くために、急遽「お宮の松」を仕立て上げてしまったのです。~
 
 *実在の登場人物 [#k30ba2d9]
 -そんな風に、あくまでも小説の中での創作だったのですが、実はこの小説にはモデルがいます。~
 主人公の間寛一は作者・尾崎紅葉の友人だった《岩谷小波</a>:いわやさざなみ》。彼は古典的な[[童話]]を調べまとめ上げた功労者で「日本のアンデルセン」とも呼ばれ、アンデルセンのふるさとデンマークから勲章も貰った人です。~
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 -その岩谷小波には、東京・芝の料亭で働いていた《須磨:すま》と言う恋人がいました。~
 岩谷は東京の[[新聞社>新聞]]に勤めていたのですが、しばらく京都支社に赴任することになったのです。しかし、京都へ赴任している間に、須磨は当時もっとも勢いがあった出版社・博文社の大橋新太郎になびいてしまったのです。~
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 -今では、遠距離恋愛の果て、遠くの恋人より身近で話を聞いてくれる人と浮気をしてしまうと言うのはけっこう[[当たり前]]の話ですが、当時は貞操観念のしっかりした時代なので、そんな不貞が許されるハズがありません。ましてや、金持ちになびいたと言うことで、とんでもない!と言うことになったのです。~
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 -しかし、話は小説のようには進まず、この岩谷小波は「心変わりをしてしまった者はしょうがない、お互いの気持ちが通じてなければ[[恋]]は続かないものだ」と、あっさりと彼女の事をあきらめてしまうのです。~
 もちろん、こんな展開では小説としては成立しません。
 
 *ふざけんじゃねぇぞ! [#z4d4b4cf]
 -実は、小説のように彼女を足蹴にしたのは、その話を聞いて友人を裏切った須磨に対して「ふざけんじゃねえぞ!」と怒り狂った尾崎紅葉で、怒りにまかせ彼女が働いていた芝の料亭にまで乗り込み、足蹴にしたと言うのです。~
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 -金色夜叉の小説のほうは、その後主人公・寛一は金で女を奪われたことを胸の中に抱え、「俺が金さえ持っていれば」と高利貸しになり[[金]]の亡者になっていくのですが、そこは完璧に尾崎紅葉の作った物語です。~
 -出だしの有名な処はモデルが存在していたのですが、この小説の全体的なテーマはそこではなく、金におぼれてしまった寛一が人間性を失って破滅していく中で資本主義の矛盾を説くというものだったのです。~
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 -もちろん岩谷小波はいたって物静かな人間で、金の亡者になる事も、復讐鬼になることもなく、ちゃんと[[結婚]]もして、[[童話]]の蒐集で功績を残していったのです。
 
 *更新履歴 [#z42212c4]
 -2001.05.20
 
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